タテジマとファイブアローズに魅せられて

　高卒で、しかもドラフト下位指名で入団した選手の年俸が、一般的なサラリーマンよりもむしろ低いことは周知の事実。それでも高校生時代には手にしたことが無いであろう金額の中から最初に買ったグローブを、あれだけ豪華な車やベルサーチに身を包んでいる選手が大切に大切に使ってきたなんて、なんて凄いことだろうと思った。

　それも４回も「手術」してでも使用している凄さ。本当に頭が下がる。

　プロ入りしてから。。。。。ということは、俺たちタイガースファンの脳裏に刻まれているあのときも、あのプレーのときも、あの勝利のときも、あの敗戦のときもずっと一緒にいたんだろう。

　オールスターや練習のときなどに違うグローブを使用しているので実際に大切に使用しているなんてそんなことを考えてもいなかった。

　道具を大切にするのはプロとして大切な姿勢と言われている。それをＳＨＩＮＪＯ選手は貫いた。買った当時だって、７，５００円よりも高いグローブはあったはず。それ以降にもっと良いグローブだって無いことは無かったと思う。でも、それでも使い続けたグローブ。一途な姿が本当にカッコイイ。最後までＳＨＩＮＪＯ選手はかっこ良かった。

　カッコイイ。単純だけど最高の誉め言葉だと思う。

　北海道を盛り上げた。パフォーマンスをすればそれ以上の結果を出した。その繰り返しは彼のスタンダードから違和感を取り除いた。

　「なんか持ってるわ、俺。。。」と言った最初で最後の日本一。思い出してみればメジャーで初打席初ヒットを打った時だって「打ちそうな気がする。」って言ってたじゃないか。何か持ってるの『何か』は神様やファンや周囲の人たちがくれた新庄選手とＳＨＩＮＪＯ選手への思い。カッコだけで通用する世界ではない。地道な練習があってこその世界だということは皆が知っている。きっとＳＨＩＮＪＯ選手だって例外ではない。

　ＳＨＩＮＪＯＹとまで言われた楽しむ姿勢。好きなことをやってるんだから楽しくやろうよ！どうしても裏読みや深読みしてしまうファンへのメッセージも多分に含んでいると感じた。

　一球入魂。でも決して根性論ではないことを気付かせてくれた。一球に楽しむ魂を込めてプレーする。目の前の１球を心から楽しんで。全力で楽しむ。全力でプレーするから楽しいんじゃないか！！

　寂しい気持もある。もっとＳＨＩＮＪＯ選手を見たい気持もある。でも彼は最後に楽しむということの意味を説くという最高のメッセージを残し、ファンの前を去って行く。

　ＳＨＩＮＪＯ選手がいると笑顔になれる。１人の笑顔がみんなを笑顔にする。本当に素晴らしい時間を一緒に過ごさせてもらった。

　「イチローくんは記録、僕は記憶」と語ったこともある。イチロー選手はともかくとして、ＳＨＩＮＪＯ選手の記憶はこれからも語り継がれることだろう。

　笑顔と明るさで周りを救った太陽のような選手。きっとお疲れ様なんて言っても喜ばないだろうし、これでお別れでもないだろうから、プロ野球引退のメッセージはこう伝えたい。

　「また会おうね！新庄さん！！」