【週末観戦記2】 劇場を超えた甲子園激情劇場(この記事のみ、選手名を敬称略で呼び捨てにすることをお許しください)
まさかこの日、こんな試合を観ることができるとは思わなかった。今まで何回も興奮して感動して声を枯らした試合はあった。でもこれほどまでに・・・・・。
先発は江草と浅井のサンデー・バッテリー。イケイケでありながら悪くなった時の歯止めに苦労する2人。若さの勢いと脆さの両面を出しながらもここまで江草はチームの勝ち頭の活躍を見せている。
この日も立ち上がりがよく、キレイなフォームで投げ込んでゆく。そして打撃陣もヒットを連ね2イニングで3得点と、ライオンズの好投手西口を攻略するかと思われた。
先発は江草と浅井のサンデー・バッテリー。イケイケでありながら悪くなった時の歯止めに苦労する2人。若さの勢いと脆さの両面を出しながらもここまで江草はチームの勝ち頭の活躍を見せている。
この日も立ち上がりがよく、キレイなフォームで投げ込んでゆく。そして打撃陣もヒットを連ね2イニングで3得点と、ライオンズの好投手西口を攻略するかと思われた。
しかしライオンズ。やはり伊東監督の戦略だろうか?カブレラを中心に打線をまとめ粘り強い攻撃で食い下がってくる。
カブレラと和田に好き勝手にさせない攻略法は成功していた。しかしそれ以外の選手にはかなり好き勝手にされた感がある。中島は大活躍、そしてライオンズの選手全般に言えることは脚が早い選手が多く、油断も隙もありゃしない。これがどれほど投手にプレッシャーを与えているかはライトスタンドから見ていても良く分かった。
苦しいながらも何とか5回を投げきってもらいたい。その気持ちは投げきることは出来たが得点的には逆転を許す展開。それもタイガースに在籍していた平尾のポールに当たるホームランで。この日は“おかわりくん”中村の代わりに打順に入っていたが見事に成功していた。
立ち直る西口。テンポよく投げ込みタイガースに攻略の糸口を与えない。こっちだって3タテなんてたまったもんじゃない。その気持ちは6回からJFKをつぎ込む継投に表れる。
甲子園に鳴り響くLINDBERGの“every little thing every precious thing”。球児くんがこの曲を入場時に使うエピソードを思い出し、そして祈るような気持ちが目頭を熱くさせる。そして周りのみんなと合唱。この日、周りのお客さんと一緒に歌ったのはこの曲と片岡さんが使用している“Bye-Bye my Love”の2曲だ。
8番9番には格の違いを見せ付け、赤田には3ベースを打たれたものの片岡を落ち着いて打ち取る。その安定感は揺ぎ無い。そのまま6,7回の2イニングを抑え込み、8回にジェフ登場。
パ・リーグの選手にはこんな投手はいないだろう。それくらいの鋭さで今日も投げ込む。時々映る表情に漲(みなぎ)る気迫。8回を抑え、攻撃陣に託す。
試合途中では桧山がセンターに入る。この攻撃的布陣で何とか勝ち越したい。その気持ちはこの無謀とも思えるメンバー交代からも感じることが出来た。いや、もうやって欲しくはないけど。
豊さんのバント失敗。でもシーツ先生のタイムリー。ついに同点!!西口が降り、星野につなぎ、石井に交代したことは悪いことではないけど、西口よりも打ち易いという印象は持っていた。しかし捕まえるには至らない。
石井はアニキを敬遠。スタンド中に響く怒号。「弱虫!」、「怖い顔してそんなもんか!」、しかし続く濱中はいい当たりのショートライナー。中島の守備にやられた。
9回、久保田がマウンドに上がる。緊張と不安が胸に。折角の同点、チームが一体となって奪った1点をつなげるんだ。でもランナーを出し、おそらくフォークを狙ってうまく握れないのか?それとも?暴投でランナーを進める。
1アウト3塁のピンチ。でもここを開き直った投球で切り抜ける。こうなったらストレートしかない!!苦肉の策で選択した配球で何とか打ち取る。
続く10回もランナーを出す。そして三度暴投。投げられる球、ストレート。相手が待つ球、ストレート。その限られた選択の中で、それでも久保田は投げ込んだ。そのとき放たれた打球はセンターのやや右へ。その瞬間「打ち取った!」と正直言って思った。実際、豊さんも一瞬、ほんの一瞬前進しかけたように見えた。しかし打球は伸びる。豊さんが懸命に打球に向かう。
みんなが期待すること以上の何かを見せる実力や運というものがあるとしたら豊さんにはきっとそれがあるに違いない。昨年の9月7日、まさかのホームラン。そしてこの日、ジャンプして伸ばした手の先にスッポリ入った打球。横転する豊さんは少し怒っているように見えた。闘志と「何やっとるんじゃ久保田ぁぁぁぁぁ!」の気持ちが表情から伝わる。
みんなが思っていた「めちゃめちゃ投げろ!」という気持ち。『久保田劇場』などといい、「またかよ!」、「負けるのかよ!」というスタンドの気持ちを「勝つしかないやろ!!」に変えた豊さんのプレー。延長10回を終え、11回表のマウンドに立つ久保田からは1つの雑念が消え、1つの執念が芽生えていた。
相手は抑えの切り札、小野寺を準備させているであろう。小野寺とは大学時代、同じチームで投げた選手。片やタイガース、片やライオンズというチームで今年は抑えを努める。小野寺は言ったらしい「久保田には負けませんよ!」と。それが彼の耳に入っていたかどうか知らないが、久保田は投げた。「見とけ!小野寺!!」
代打にこの日、出番が無かった“おかわり”中村が登場する。“おかわり”なんて言われているけど、脚は速いわ、長打力はあるわの好選手。この、『2人で飯を食わせたらおそらく2人とも無言で黙々と食べつづけそうな』久保田と中村の対決は「おまえ、キャラ被っとるんじゃ!!」という久保田の渾身の投球で三振に切って取る(この段落の「 」内はフィクション)。
圧巻の投球と見せ付けられ、マウンドには小野寺。正直言って、それまでの西口、石井、星野、三井に比べれば一番得点できそうな投手に思えた。
昨日も投げている小野寺。でも昨日はタイガースの負け試合。沈んでいた球場とは全く別の雰囲気の甲子園のマウンドだ。そこに甲子園中を覆う激情が襲い掛かる。ただでさえ、豊さんのファインプレーで観客とチームはすっかり『できあがって』いるというのに。
甲子園のイエローの1列目で観戦してみると凄く分かること。それは球場の声援が本当に地鳴りのように感じて、360°、まるで天井からも降ってくるような歓声があるということ。小野寺にはそれが更に強く感じたことだろう。
シーツ先生は打ち取った。アニキには警戒して四球。ここで闘志をたぎらせるスペンサー登場。早打ちをしないこの選手はじっくり見て四球を選ぶ。
この瞬間まで、正直言ってベンチには矢野さんしかいないと思っていた。なので右の小野寺に対し藤本がそのまま出ると思っていた。でもベンチ前で素振りをしている選手の背番号は違っていた。背番号7、この男が控えとして残っていた。
調子が上がらない毎日で、できるだけ楽な場面で使って復調させたいという配慮もあったと思う。しかし一番燃える場面で彼の出番がやってきた。やはりそういう『役目』を担う選手ということなんだろう。でなけりゃこの出番を説明できない。
可能性としては、今年散々ため息をつかされたゲッツーをいう可能性だってあった。ただ、もしも録画している方がいたらこのときに打席に向かう表情を見て欲しい。弱気の「よ」の字も表情に無く、少し目を吊り上げ、下唇を出した今岡の表情が大きく映っている。
初球のストレートを見送る。ややかがめた姿勢で、不調の時のように過剰にオープンスタンスになることもなく構える。悪い時の今岡は打てる球も見送り、苦しい球に打たされていた。
2球目は外の高めのストレート。これを普通にライトに流す。「切れるな!」、「抜けろ!」・・・・・打球が切れることなくライト高山の僅か外を抜けて行く。俺たちが応援していたライトの方向に打球が一直線に飛んでくる。
打球が抜けたのを確認してからアニキが3塁を回る。スタンドも大騒ぎ。おそらくベンチも大騒ぎ。期待した男が期待どおりの結果を出した。もしかしたら・・・・・そんな不安を一瞬でも胸に感じた人も多いはず。でもそんなことは無かったかのように今岡が結果を出した。
「めちゃめちゃ嬉しいです!」、「何度も言っていいですか?めちゃめちゃ嬉しいです!」
それは打席に向かうときの表情とは正反対。あれ?まこっちゃんってこんなにタレ目だったの?というくらい柔和な表情を見せていた。
空に響く六甲颪。勝ったから書けることだが久保田がこの空気を作るのに一役買った。球児とジェフが試合を渡さなかった。豊さんが試合を救った。アニキが「顔」で流れを持ってきた。そして今岡が決めた。交流戦打率12球団最下位でもここまで勝てる。首位に復帰できる。タイガースと甲子園に流れる激情という名の激流。これが最後に流されまいとする獅子を飲み込んだ。
サヨナラゲームなんて1年に何回あるんだろう?でもこのサヨナラゲ−ムを今年は2回も観ることが出来た。前回のオリックス戦のときも興奮した。でも今回の延長11回も興奮した。試合が終わったら静岡に帰らなきゃならないんだけど、帰りの新幹線を心配する気持ちは途中で消えた。やっぱり目の前の勝負を楽しまないと!!
気がついたら立ち上がって、気がついたら声をあげていて、涙ぐんで最後に笑って喜んだこの勝負。その場にいることが出来て、それがしかもライトスタンドで。
ペナントレースはまだまだ残りのほうが余程多い。でもこの試合が残り試合にもつながる何かであるかのような、そんな余韻をたっぷり残した『GAME』であって『BATTLE』であった。そしてこの試合だけで酒が進む。そんな試合を観れたことに心から感謝している。
カブレラと和田に好き勝手にさせない攻略法は成功していた。しかしそれ以外の選手にはかなり好き勝手にされた感がある。中島は大活躍、そしてライオンズの選手全般に言えることは脚が早い選手が多く、油断も隙もありゃしない。これがどれほど投手にプレッシャーを与えているかはライトスタンドから見ていても良く分かった。
苦しいながらも何とか5回を投げきってもらいたい。その気持ちは投げきることは出来たが得点的には逆転を許す展開。それもタイガースに在籍していた平尾のポールに当たるホームランで。この日は“おかわりくん”中村の代わりに打順に入っていたが見事に成功していた。
立ち直る西口。テンポよく投げ込みタイガースに攻略の糸口を与えない。こっちだって3タテなんてたまったもんじゃない。その気持ちは6回からJFKをつぎ込む継投に表れる。
甲子園に鳴り響くLINDBERGの“every little thing every precious thing”。球児くんがこの曲を入場時に使うエピソードを思い出し、そして祈るような気持ちが目頭を熱くさせる。そして周りのみんなと合唱。この日、周りのお客さんと一緒に歌ったのはこの曲と片岡さんが使用している“Bye-Bye my Love”の2曲だ。
8番9番には格の違いを見せ付け、赤田には3ベースを打たれたものの片岡を落ち着いて打ち取る。その安定感は揺ぎ無い。そのまま6,7回の2イニングを抑え込み、8回にジェフ登場。
パ・リーグの選手にはこんな投手はいないだろう。それくらいの鋭さで今日も投げ込む。時々映る表情に漲(みなぎ)る気迫。8回を抑え、攻撃陣に託す。
試合途中では桧山がセンターに入る。この攻撃的布陣で何とか勝ち越したい。その気持ちはこの無謀とも思えるメンバー交代からも感じることが出来た。いや、もうやって欲しくはないけど。
豊さんのバント失敗。でもシーツ先生のタイムリー。ついに同点!!西口が降り、星野につなぎ、石井に交代したことは悪いことではないけど、西口よりも打ち易いという印象は持っていた。しかし捕まえるには至らない。
石井はアニキを敬遠。スタンド中に響く怒号。「弱虫!」、「怖い顔してそんなもんか!」、しかし続く濱中はいい当たりのショートライナー。中島の守備にやられた。
9回、久保田がマウンドに上がる。緊張と不安が胸に。折角の同点、チームが一体となって奪った1点をつなげるんだ。でもランナーを出し、おそらくフォークを狙ってうまく握れないのか?それとも?暴投でランナーを進める。
1アウト3塁のピンチ。でもここを開き直った投球で切り抜ける。こうなったらストレートしかない!!苦肉の策で選択した配球で何とか打ち取る。
続く10回もランナーを出す。そして三度暴投。投げられる球、ストレート。相手が待つ球、ストレート。その限られた選択の中で、それでも久保田は投げ込んだ。そのとき放たれた打球はセンターのやや右へ。その瞬間「打ち取った!」と正直言って思った。実際、豊さんも一瞬、ほんの一瞬前進しかけたように見えた。しかし打球は伸びる。豊さんが懸命に打球に向かう。
みんなが期待すること以上の何かを見せる実力や運というものがあるとしたら豊さんにはきっとそれがあるに違いない。昨年の9月7日、まさかのホームラン。そしてこの日、ジャンプして伸ばした手の先にスッポリ入った打球。横転する豊さんは少し怒っているように見えた。闘志と「何やっとるんじゃ久保田ぁぁぁぁぁ!」の気持ちが表情から伝わる。
みんなが思っていた「めちゃめちゃ投げろ!」という気持ち。『久保田劇場』などといい、「またかよ!」、「負けるのかよ!」というスタンドの気持ちを「勝つしかないやろ!!」に変えた豊さんのプレー。延長10回を終え、11回表のマウンドに立つ久保田からは1つの雑念が消え、1つの執念が芽生えていた。
相手は抑えの切り札、小野寺を準備させているであろう。小野寺とは大学時代、同じチームで投げた選手。片やタイガース、片やライオンズというチームで今年は抑えを努める。小野寺は言ったらしい「久保田には負けませんよ!」と。それが彼の耳に入っていたかどうか知らないが、久保田は投げた。「見とけ!小野寺!!」
代打にこの日、出番が無かった“おかわり”中村が登場する。“おかわり”なんて言われているけど、脚は速いわ、長打力はあるわの好選手。この、『2人で飯を食わせたらおそらく2人とも無言で黙々と食べつづけそうな』久保田と中村の対決は「おまえ、キャラ被っとるんじゃ!!」という久保田の渾身の投球で三振に切って取る(この段落の「 」内はフィクション)。
圧巻の投球と見せ付けられ、マウンドには小野寺。正直言って、それまでの西口、石井、星野、三井に比べれば一番得点できそうな投手に思えた。
昨日も投げている小野寺。でも昨日はタイガースの負け試合。沈んでいた球場とは全く別の雰囲気の甲子園のマウンドだ。そこに甲子園中を覆う激情が襲い掛かる。ただでさえ、豊さんのファインプレーで観客とチームはすっかり『できあがって』いるというのに。
甲子園のイエローの1列目で観戦してみると凄く分かること。それは球場の声援が本当に地鳴りのように感じて、360°、まるで天井からも降ってくるような歓声があるということ。小野寺にはそれが更に強く感じたことだろう。
シーツ先生は打ち取った。アニキには警戒して四球。ここで闘志をたぎらせるスペンサー登場。早打ちをしないこの選手はじっくり見て四球を選ぶ。
この瞬間まで、正直言ってベンチには矢野さんしかいないと思っていた。なので右の小野寺に対し藤本がそのまま出ると思っていた。でもベンチ前で素振りをしている選手の背番号は違っていた。背番号7、この男が控えとして残っていた。
調子が上がらない毎日で、できるだけ楽な場面で使って復調させたいという配慮もあったと思う。しかし一番燃える場面で彼の出番がやってきた。やはりそういう『役目』を担う選手ということなんだろう。でなけりゃこの出番を説明できない。
可能性としては、今年散々ため息をつかされたゲッツーをいう可能性だってあった。ただ、もしも録画している方がいたらこのときに打席に向かう表情を見て欲しい。弱気の「よ」の字も表情に無く、少し目を吊り上げ、下唇を出した今岡の表情が大きく映っている。
初球のストレートを見送る。ややかがめた姿勢で、不調の時のように過剰にオープンスタンスになることもなく構える。悪い時の今岡は打てる球も見送り、苦しい球に打たされていた。
2球目は外の高めのストレート。これを普通にライトに流す。「切れるな!」、「抜けろ!」・・・・・打球が切れることなくライト高山の僅か外を抜けて行く。俺たちが応援していたライトの方向に打球が一直線に飛んでくる。
打球が抜けたのを確認してからアニキが3塁を回る。スタンドも大騒ぎ。おそらくベンチも大騒ぎ。期待した男が期待どおりの結果を出した。もしかしたら・・・・・そんな不安を一瞬でも胸に感じた人も多いはず。でもそんなことは無かったかのように今岡が結果を出した。
「めちゃめちゃ嬉しいです!」、「何度も言っていいですか?めちゃめちゃ嬉しいです!」
それは打席に向かうときの表情とは正反対。あれ?まこっちゃんってこんなにタレ目だったの?というくらい柔和な表情を見せていた。
空に響く六甲颪。勝ったから書けることだが久保田がこの空気を作るのに一役買った。球児とジェフが試合を渡さなかった。豊さんが試合を救った。アニキが「顔」で流れを持ってきた。そして今岡が決めた。交流戦打率12球団最下位でもここまで勝てる。首位に復帰できる。タイガースと甲子園に流れる激情という名の激流。これが最後に流されまいとする獅子を飲み込んだ。
サヨナラゲームなんて1年に何回あるんだろう?でもこのサヨナラゲ−ムを今年は2回も観ることが出来た。前回のオリックス戦のときも興奮した。でも今回の延長11回も興奮した。試合が終わったら静岡に帰らなきゃならないんだけど、帰りの新幹線を心配する気持ちは途中で消えた。やっぱり目の前の勝負を楽しまないと!!
気がついたら立ち上がって、気がついたら声をあげていて、涙ぐんで最後に笑って喜んだこの勝負。その場にいることが出来て、それがしかもライトスタンドで。
ペナントレースはまだまだ残りのほうが余程多い。でもこの試合が残り試合にもつながる何かであるかのような、そんな余韻をたっぷり残した『GAME』であって『BATTLE』であった。そしてこの試合だけで酒が進む。そんな試合を観れたことに心から感謝している。