タテジマとファイブアローズに魅せられて

　地下街ではなく、そこは地下道。だから狭いのだ。狭いってことは声が響くのだ。

　するとそこで突然、若い女性の声が飛び込んできた。

　「アタシと付き合った男の半分は、“アタシはイイ！”って言うよ！！」

　・・・・・なんのことだ？！と思った。そしてそれは即、良い子には言えない大人の内容のように聞こえた。

　半分か・・・・・２人のうち１人でも半分だし、１０人中５人でも半分だ。

　俺はその女性の後ろを歩いていたので、様子はわからないが２０代前半・・・・・いや、未成年か？！とも思える感じだ。ま、人は見た目だけじゃ年齢は分らんが。

　とにかく半分だ！！いや、もっと大事なのは一体その子の何がイイ！！んだ？！こっちの方が気になる。

　一般的に人は自分を過大評価しがちである。以前、隣の課に結構可愛い子がいたが、そいつが「私は可愛い。」と俺の前で公言しやがってからはそれをネタにして笑うしかなかった。確かにかわいいけど、それを自分で言っちゃいけないよな。そんなの「俺は仕事が忙しい。」と言ってるのと一緒。そりゃ誰だって忙しいって！！みんな忙しさの種類が違うだけで、楽して金稼げる奴なんていねぇよ。

　話を戻して。とにかく何がイイんだ？！そこで俺は考えた。いくつか考えた。

　１　性格がイイ

　２　雰囲気がイイ

　３　思えば付き合っている時間が良かった

　４　酒癖がイイ

　５　っていうか、「お前なんかもうイイや！」の「イイ！」だったのか？

　６　良い子にはお見せできない大人の内容的にイイ！

　もうね、終いにはどうでも良かったですけどね、とにかくイイんでしょうよ。

　俺は次の交差点を曲がる。それではい、おしまい。

　・・・・・だが待てよ！！せめて顔だけは見ても罰は当たるまい。そう思って俺は早足でその人を抜き去った。そしてさり気なく振り向いて見た。

　・・・・・いやぁ、半分は言いすぎだろ！！恐らくな！！