タテジマとファイブアローズに魅せられて

　伊良部選手が完投したんだったかな？で、９回裏に同点の場面で桧山選手に打席が回ってきた。

　桧山選手の打球はレフト方向に飛んでいった。そしてレフトポールのギリギリのところのアルプス席に飛び込んだ。

　ライトスタンド７段目で観戦していた俺にはそれがホームランなのかファールなのか入った瞬間は分からなかったが、それがサヨナラホームランになったとわかるまでに時間はかからなかった。

　その試合でお立ち台に上がった伊良部選手は「いやぁ、甲子園のファンは世界一ですよ。」と言い、桧山選手は開口一番「やりました！」と絶叫した。それは桧山選手がプロ入り初のサヨナラホームランを打った試合だった。

　長くファンをやっていると色々な場面を見る。１番新庄、２番桧山などという考えられない打順も実際にあった。

　今年も昨年と同じように桧山選手は不調にあえいだ。シーズン途中にチケットぴあのサイトで現役時代を振り返るかのようなコラムが連載された時は「おぃおぃ、シーズン中だぜ・・・・・引退するから現役時代を振り返るのか？」なんて本当に思ったが、それが唐突な感すらする終わり方をしたのを見て「あ、もう１年だな。」という予感がした。

　ずっと先発であった選手である。暗黒時代終盤は代打というか控えになったことも多々あった。でも再び先発に返り咲いた。だから今のような代打起用には慣れるまで相当な時間がかかると思う。それがシーズン終盤に「辛抱してボールを見る」ことが出来るようになってから勝負勘が格段に磨かれてきた。だから来年は右の光信、左の桧山といった感じで「代打の“神様”」にはなれないだろうけど「代打の“切り札”」にはなってくれるのではないか。

　大幅減俸は避けられないとは素人の俺だって今年の打撃成績をみれば分かる。こっちの虫の良い話だが、それでも桧山選手には“タイガースの桧山”でいて欲しいと思う。だって苦しい時代も一緒になって歌ってきたあのヒッティングマーチは、こっちだってまだ歌い足りないのである。そしてそのヒッティングマーチの中で、美しい宝物線を描くホームランもまだ見足りないのである。