五月雨が洗い流した夜(長文)
村上ファンドが電鉄に取締役の選任について要求した。そんな変てこなニュースがあった試合前だ。
試合はとにかく3者凡退で終わるイニングが前半は無く、ある意味で両チームとも「よくこの点数で収まっていたな。」って感じ。それほどまでに試合が長い。
先に崩れた(という言い方が正しいかどうか分からないが)のはオックスの方。元々コントロールで勝負するはずが、主審の狭いストライクゾーンのせいもあり、そしておそらくコーナーを狙いすぎ、ランナーが出ればゲッツーを欲しがりすぎてランナーを溜めてゆく。
先制のホームランでパウエルから点を奪うが単発で、その後を心配する中で押し出しから失点を重ねる。
続いて出てきた能見投手も左打者を抑えるという役割を果たせぬまま失点。もしもこの試合を落とすならこの場面。そう思えてしまった場面だった。
でも甲子園球場は甲子園球場。人工芝ドームではない。
藤本選手のヒットの後、アニキのレフト線への当たりは清水の『十八番』の拙い守備でスリーベースに。これを今岡選手がヤクルト戦同様の誰でも簡単に出来るわけでもないのだが『最低限の仕事』で還す。これで1点差。なおさら能見投手のあの1失点が・・・・・と思うまもなく濱中選手が続いた。
場面は2アウト2塁。鳥谷選手の当たりはセンター前へ。あらかじめバックホーム態勢のセンター鈴木がダッシュして返球。2アウトだったので打った瞬間にGo!の濱中選手がいつものように陸上の短距離選手のようなフォームで3塁を回る。タイミング的にはアウトのようにも見える。「遂に吉竹信号機も壊れたか?!」そう思ったが、鈴木の返球がそれて浮く。濱中選手の好スライディング!!同点だ!!後続は絶たれたがそれで充分な展開だった。
徐々に厳しい場面での当番機会になっている金澤投手の我慢の後、8回裏は今岡選手がまるでバットの先に手でも付いていて掴んで投げたかのような「何でそこに飛ばせる?」ヒットで出塁するなど、不思議打法の七分咲き。そろそろか?
そして迎えた最終回。8回の球児くんのランナーを出してからの走る速球。9回の久保田投手の迫力の投球でお膳立ては出来た。
ここ数ヶ月、振り回された親会社の株問題。抑え投手の調子が上がらない。やっと前試合で勝ったとはいえ接戦で勝てない。そんなことを色々背負って戦ってきたのが4月のタイガースだった。それでも変わらないものは勝利への希求と「こう」と決めたら動かない将だった。
左投手の場面で打席には関本選手。同期入団の濱中選手はスペンサーに代わっている。ちっと早いんじゃねぇの?とか思ったけどね。でも長いシーズン考えたら仕方ないかも。
2アウトでランナーはいない。とにかくつなげよう。しかしつなげようの気持ちは自信が最後の打者になることで帰結を迎えた。しかもそれはそうなることが当然であるかのように。
「あの年」のドラフトは4人しか指名しなかったけど豊作だったと後に言われることになる。1位(逆指名)は今岡選手、3位は濱中選手だった。本当は2位で濱中選手だったんだけど、当時の監督が大型内野手を欲しがったことと、他球団が先に指名しそうな情報があったため2位で指名したといわれている。その選手が決めた。
「64」という背番号からスタート。そして「44」へ。「44」は神様と呼ばれた史上最強外国人選手ともいわれた偉大な選手の番号。ファームでじっくり育ち、2003年から1軍に定着した。
昨年は信じられないホームラン「0」。1軍しがみつき打法とか監督にも言われたけど、しがみつこうが何であろうが1軍にい続けたことの証を見せた。
確かに少し甘く入った球だった。しかしそれを見逃さず、ボールの下を擦り付けるかのようなスイングから放たれた打球はバックスクリーンの少しライト側の最前列に運ばれた。
誰もが「そうなればいいな。」と心の中で思っていた場面、心の中で願っていた展開。それが現実となって目の前に現われた。
前回の読売戦、東京ドームではサヨナラホームランを打たれた。ところがどうだ?!今度はサヨナラホームランで勝った。
前試合のヤクルト戦といい、今日の試合といい、相手が違ったとしても(犠牲フライ2本で負けた相手は広島だが)日をそれほどおかずにやり返せる地力、意識の高さは特筆モノだ。
色々あった4月を経て、今日は5月の最初の試合。甲子園は晴天だっただろうが静岡は夕方から優しい小雨が降った。その五月雨(注)とでも言うべき中、帰宅を急いだ。
乾いた地面に潤いを。疲れたチーム(と俺)にも安らぎを。そんな優しい五月雨だった。その雨が優しくタイガースを洗い、力を与えた。甲子園中から降り注ぐ五月雨のような優しい歓声が関本選手を包み込んだ。
明日も戦いは続く。その戦いに潤いと勇気を与え、そして「何も心配することは無いんだよ。」 そんな優しさに満ちた関本選手のプロ入りサヨナラホームランが、最後の最後に全ての汚れや疲れを洗い流して明日への気持ちをくれた。そんな素晴らしい一打であったと思うし、テレビ中継ではあったがそれだけでも見ることが出来て幸せだったと思う。
イライラして、ドキドキして、声を上げ、最後に喜べた素晴らしい試合だった。ありがとう、関本選手。ありがとう、阪神タイガース!!
最後に、濱中選手、月間MVPおめでとう!!
(注)五月雨とは正確には「陰暦の五月の雨」。つまり梅雨時の長雨のことですが、今回の文章では「五月の雨」ということで表記いたしました。
試合はとにかく3者凡退で終わるイニングが前半は無く、ある意味で両チームとも「よくこの点数で収まっていたな。」って感じ。それほどまでに試合が長い。
先に崩れた(という言い方が正しいかどうか分からないが)のはオックスの方。元々コントロールで勝負するはずが、主審の狭いストライクゾーンのせいもあり、そしておそらくコーナーを狙いすぎ、ランナーが出ればゲッツーを欲しがりすぎてランナーを溜めてゆく。
先制のホームランでパウエルから点を奪うが単発で、その後を心配する中で押し出しから失点を重ねる。
続いて出てきた能見投手も左打者を抑えるという役割を果たせぬまま失点。もしもこの試合を落とすならこの場面。そう思えてしまった場面だった。
でも甲子園球場は甲子園球場。人工芝ドームではない。
藤本選手のヒットの後、アニキのレフト線への当たりは清水の『十八番』の拙い守備でスリーベースに。これを今岡選手がヤクルト戦同様の誰でも簡単に出来るわけでもないのだが『最低限の仕事』で還す。これで1点差。なおさら能見投手のあの1失点が・・・・・と思うまもなく濱中選手が続いた。
場面は2アウト2塁。鳥谷選手の当たりはセンター前へ。あらかじめバックホーム態勢のセンター鈴木がダッシュして返球。2アウトだったので打った瞬間にGo!の濱中選手がいつものように陸上の短距離選手のようなフォームで3塁を回る。タイミング的にはアウトのようにも見える。「遂に吉竹信号機も壊れたか?!」そう思ったが、鈴木の返球がそれて浮く。濱中選手の好スライディング!!同点だ!!後続は絶たれたがそれで充分な展開だった。
徐々に厳しい場面での当番機会になっている金澤投手の我慢の後、8回裏は今岡選手がまるでバットの先に手でも付いていて掴んで投げたかのような「何でそこに飛ばせる?」ヒットで出塁するなど、不思議打法の七分咲き。そろそろか?
そして迎えた最終回。8回の球児くんのランナーを出してからの走る速球。9回の久保田投手の迫力の投球でお膳立ては出来た。
ここ数ヶ月、振り回された親会社の株問題。抑え投手の調子が上がらない。やっと前試合で勝ったとはいえ接戦で勝てない。そんなことを色々背負って戦ってきたのが4月のタイガースだった。それでも変わらないものは勝利への希求と「こう」と決めたら動かない将だった。
左投手の場面で打席には関本選手。同期入団の濱中選手はスペンサーに代わっている。ちっと早いんじゃねぇの?とか思ったけどね。でも長いシーズン考えたら仕方ないかも。
2アウトでランナーはいない。とにかくつなげよう。しかしつなげようの気持ちは自信が最後の打者になることで帰結を迎えた。しかもそれはそうなることが当然であるかのように。
「あの年」のドラフトは4人しか指名しなかったけど豊作だったと後に言われることになる。1位(逆指名)は今岡選手、3位は濱中選手だった。本当は2位で濱中選手だったんだけど、当時の監督が大型内野手を欲しがったことと、他球団が先に指名しそうな情報があったため2位で指名したといわれている。その選手が決めた。
「64」という背番号からスタート。そして「44」へ。「44」は神様と呼ばれた史上最強外国人選手ともいわれた偉大な選手の番号。ファームでじっくり育ち、2003年から1軍に定着した。
昨年は信じられないホームラン「0」。1軍しがみつき打法とか監督にも言われたけど、しがみつこうが何であろうが1軍にい続けたことの証を見せた。
確かに少し甘く入った球だった。しかしそれを見逃さず、ボールの下を擦り付けるかのようなスイングから放たれた打球はバックスクリーンの少しライト側の最前列に運ばれた。
誰もが「そうなればいいな。」と心の中で思っていた場面、心の中で願っていた展開。それが現実となって目の前に現われた。
前回の読売戦、東京ドームではサヨナラホームランを打たれた。ところがどうだ?!今度はサヨナラホームランで勝った。
前試合のヤクルト戦といい、今日の試合といい、相手が違ったとしても(犠牲フライ2本で負けた相手は広島だが)日をそれほどおかずにやり返せる地力、意識の高さは特筆モノだ。
色々あった4月を経て、今日は5月の最初の試合。甲子園は晴天だっただろうが静岡は夕方から優しい小雨が降った。その五月雨(注)とでも言うべき中、帰宅を急いだ。
乾いた地面に潤いを。疲れたチーム(と俺)にも安らぎを。そんな優しい五月雨だった。その雨が優しくタイガースを洗い、力を与えた。甲子園中から降り注ぐ五月雨のような優しい歓声が関本選手を包み込んだ。
明日も戦いは続く。その戦いに潤いと勇気を与え、そして「何も心配することは無いんだよ。」 そんな優しさに満ちた関本選手のプロ入りサヨナラホームランが、最後の最後に全ての汚れや疲れを洗い流して明日への気持ちをくれた。そんな素晴らしい一打であったと思うし、テレビ中継ではあったがそれだけでも見ることが出来て幸せだったと思う。
イライラして、ドキドキして、声を上げ、最後に喜べた素晴らしい試合だった。ありがとう、関本選手。ありがとう、阪神タイガース!!
最後に、濱中選手、月間MVPおめでとう!!
(注)五月雨とは正確には「陰暦の五月の雨」。つまり梅雨時の長雨のことですが、今回の文章では「五月の雨」ということで表記いたしました。