【2本立て】 背中に炎を背負う男
男はオフに鹿児島のお寺(最福寺)をたずねる。燃え盛る炎の前で一心に経を唱える。そのとき頭に浮かぶものはおそらく何も無い。いや、浮かべるという次元の話ではないはずだ。終わったあとには火傷の跡のようなものもできるという厳行にどうしてそこまで挑むのか?しかしそれが彼の選手生命を表して来た。
主力選手がFA移籍や怪我で欠場する中、彼は「自分まで欠場したらチームはどうなるんだろう。」という危機感を持つ。ある試合の前には達川監督(当時広島)と星野監督(当時中日)の会話を耳にする。「どんな選手が助かるか?そりゃ出続けてくれる選手だ。」。
その言葉を耳にして誓いを新たにする。
アニキの年齢でこの連続試合数ということは、30歳近くなってから始まったものであるはず。20代中盤くらいから始まっていたら今はもっと凄い数字になっていた。しかし自らを雑草といい、「雑草はアスファルトからでも伸びてくるが、お前はコンクリートの間からでも伸びてくる。」と言われるまでに精進を重ねた。その姿が出始めたのがその時期だったということだろう。それまでは苦手でもないのに相手が左投手の時には代打を出されることもあった。
燃え盛る炎の前で行われるのは護摩行。護摩とは仏教で所願をかなえるために行われる火の行。しかしその所願とは本来は人間的な目先の願望のことではない。そしてその行は背中に炎を背負う不動明王様の前で行われる。
背中に火を背負い、憤怒の形相で涙を飲み込み邪を祓い、多くの人を救う不動明王様の姿を前に祈りを終えた後、彼は何を思うのだろう。
だが、彼のプレーそのものが、背中に炎を背負い、辛さも飲み込み、チームに棲まう弱気を払いのけてきたことを知るファンは多い。護摩で得たものを彼は姿でチームに持ち帰り、多くの選手を覚醒させてきた。なんと徳のある選手だろう。
自分の道を求めるために厳しい姿を見せてきた選手は何人か見た。おそらくソフトバンク・ホークスの王監督の選手時代もそうだったと思う。(決して王さんが自己中心であると書いているわけではない。むしろ、そこまで自分に厳しく自分を高めることが出来ることは常人の出来ることではなく、そのホームラン世界記録は日本の誇りだと思っている。)
だが、私はいままでプロ野球ファンでありながら、これほどまでに周囲の選手の意識や表情を変えてくれた選手を観たことが無い。
前述した王さんも、世界の盗塁王の福本さんも、40代で30本かっ飛ばした門田さんもきっと壮絶な自分との戦いがあったはずだ。
でも彼は自分と戦い、周りも戦う集団に変えた。周りの見る目も変え、他の選手にも後に続いてみようと思わせることが出来ている。そしてそれは彼ほどの打力を自分が持っていなかったとしても目指せるものだ。脚が速いものなら脚で、巧さがあるものは巧さで、そうやって自分の長所で目指せる記録。それがどれほど尊いものか。
今でも彼は背中に炎を背負い、チームに足りないものがあると自らの姿勢と言葉でそれを補い、選手に気付かせる。904という考えられない連続出場記録はこれからもきっともっと伸び、1000試合だって達成してくれるだろう。厳しさの裏側にある優しさ。憤怒の形相で涙をグッと飲み込む、慈悲に溢れる不動明王様の姿をチームに持ち帰った姿は、もう2度と「ダメ虎」なんて言わせない覚悟を選手やスタッフ、そして私たちファン全員にくれた。
連続出場、本当に素晴らしい記録。でもその中味は数字以上に素晴らしく、そして何色にも変えがたい色で彩られて、これからも褪せることなく輝き続けるはずだ。
金本知憲選手
連続フルイニング出場世界記録達成
本当におめでとうございます。
あなたの現役時代を、しかも全盛期を見ることが出来ることを本当に幸せに思います。さぁ、次は905試合目が待っていますよ!!あなたの出場が、これからは世界新記録です。
俺はもう、セレモニーを観ていたら涙が止まらなかったよ。
主力選手がFA移籍や怪我で欠場する中、彼は「自分まで欠場したらチームはどうなるんだろう。」という危機感を持つ。ある試合の前には達川監督(当時広島)と星野監督(当時中日)の会話を耳にする。「どんな選手が助かるか?そりゃ出続けてくれる選手だ。」。
その言葉を耳にして誓いを新たにする。
アニキの年齢でこの連続試合数ということは、30歳近くなってから始まったものであるはず。20代中盤くらいから始まっていたら今はもっと凄い数字になっていた。しかし自らを雑草といい、「雑草はアスファルトからでも伸びてくるが、お前はコンクリートの間からでも伸びてくる。」と言われるまでに精進を重ねた。その姿が出始めたのがその時期だったということだろう。それまでは苦手でもないのに相手が左投手の時には代打を出されることもあった。
燃え盛る炎の前で行われるのは護摩行。護摩とは仏教で所願をかなえるために行われる火の行。しかしその所願とは本来は人間的な目先の願望のことではない。そしてその行は背中に炎を背負う不動明王様の前で行われる。
背中に火を背負い、憤怒の形相で涙を飲み込み邪を祓い、多くの人を救う不動明王様の姿を前に祈りを終えた後、彼は何を思うのだろう。
だが、彼のプレーそのものが、背中に炎を背負い、辛さも飲み込み、チームに棲まう弱気を払いのけてきたことを知るファンは多い。護摩で得たものを彼は姿でチームに持ち帰り、多くの選手を覚醒させてきた。なんと徳のある選手だろう。
自分の道を求めるために厳しい姿を見せてきた選手は何人か見た。おそらくソフトバンク・ホークスの王監督の選手時代もそうだったと思う。(決して王さんが自己中心であると書いているわけではない。むしろ、そこまで自分に厳しく自分を高めることが出来ることは常人の出来ることではなく、そのホームラン世界記録は日本の誇りだと思っている。)
だが、私はいままでプロ野球ファンでありながら、これほどまでに周囲の選手の意識や表情を変えてくれた選手を観たことが無い。
前述した王さんも、世界の盗塁王の福本さんも、40代で30本かっ飛ばした門田さんもきっと壮絶な自分との戦いがあったはずだ。
でも彼は自分と戦い、周りも戦う集団に変えた。周りの見る目も変え、他の選手にも後に続いてみようと思わせることが出来ている。そしてそれは彼ほどの打力を自分が持っていなかったとしても目指せるものだ。脚が速いものなら脚で、巧さがあるものは巧さで、そうやって自分の長所で目指せる記録。それがどれほど尊いものか。
今でも彼は背中に炎を背負い、チームに足りないものがあると自らの姿勢と言葉でそれを補い、選手に気付かせる。904という考えられない連続出場記録はこれからもきっともっと伸び、1000試合だって達成してくれるだろう。厳しさの裏側にある優しさ。憤怒の形相で涙をグッと飲み込む、慈悲に溢れる不動明王様の姿をチームに持ち帰った姿は、もう2度と「ダメ虎」なんて言わせない覚悟を選手やスタッフ、そして私たちファン全員にくれた。
連続出場、本当に素晴らしい記録。でもその中味は数字以上に素晴らしく、そして何色にも変えがたい色で彩られて、これからも褪せることなく輝き続けるはずだ。
金本知憲選手
連続フルイニング出場世界記録達成
本当におめでとうございます。
あなたの現役時代を、しかも全盛期を見ることが出来ることを本当に幸せに思います。さぁ、次は905試合目が待っていますよ!!あなたの出場が、これからは世界新記録です。
俺はもう、セレモニーを観ていたら涙が止まらなかったよ。