観戦していて一番切ない日
声を出したら涙が出る。4月18日の横浜スタジアムのレフトで私はそんな状態になっていた。
伏線は前日にあった。レフト前ヒットで金本選手は返球出来なかった。無意識のうちに肩をかばっているのだろうか?握り損ねたのとは違う返球が無人のグランドに転がったのだ。
それを見ただけで何かが今までと違う雰囲気を感じたのだ。「もしかしたら・・・」というものである。
いや、実際にはその返球を見る前に、超前進守備のアニキの前に転がっただけで、横浜の3塁コーチは2塁ランナーに向かって腕をぐるぐる回している。もはや金本選手の肩はそれほどまでに相手に思われているのだ。
これでも出るのだろうか?これでも出すのだろうか?17日の試合のようにビハインドの場面ではなくて、もしもそれが決勝点となってしまう場面だったらどうするんだろう?そんなことを思いながら球場から宿泊先への帰り道を歩いた。
日曜日の試合前、金本選手の姿はグランドになかった。レフトの位置では葛城選手と浅井選手が練習していた。これにしたって金本選手は肩の様子を見て試合前練習は回避しているんだと思い、違和感は特に感じなかった。
スタメン発表が始まった。1番マートン選手、2番平野選手、3番鳥谷選手と紹介が進む。
そして4番・・・・・呼ばれたのは新井選手だった。そして選手紹介は進んで行く。
隣で見ていた妻は4番が金本選手じゃない時点で記録が途絶えることを感じ取ったということだが、私は最後の発表までそうは思えなかった。満身創痍でここまでやってきた選手である。打順が何番であろうと全力で戦ってくれるはず。そう思っていた。
8番レフト・・・・・一瞬の静寂とはこういう時間なんだろう。選手名が呼ばれるまでの時間が長く感じた。
ざわめきというかどよめきというか、そんな空気がレフトスタンドを支配した。世界記録が途絶える瞬間を見てしまったのがショックなのか、金本選手がいないスタメンを見たことがショックなのか分からないが、にわかに信じられない光景を目の当たりにした瞬間だったのだ。
負けられない。そんな気持ちになるまで時間はかからなかったが、直ぐに理解できる出来事ではなかった。頭では納得しているが、心が追い付いていないのだ。赤星選手引退の時も同じ感覚だった。
でも金本選手が引退するわけでは無い。そう思っていても何と言っていいか分からない時間だった。
この日のオーダーは始まったばかりの2010年を戦うものとなる。新井選手にはタイガースの4番として打って打って打ちまくってほしい。そう思えるのだが。。。。。
応援していても不思議な試合だった。負けられない気持ちを選手全員が出していた。ブラゼル選手の明るさ満点のアーチが場外に消え、ファンの笑顔を取り戻した。私もあんなに音程を無視して六甲おろしを歌ったことなど無い。久保田投手の投球も前日とは全然違っていた。試合をしめるのは得点差に関わりなく今日だけは球児投手しかいなかった。
金本選手は終盤に代打で出た。代打であっても偉大な選手であることに変わり無い。俺は金本選手の印象は沢山あるのだが、9回に出て来て勝負を決める強さをこの日は思い描いていた。その強さを見せる場面だってフルイニング出ているからやってくるものと思っている。
試合が終わって勝利の1−9を歌う。唐突に4番のところで金本選手のヒッティングマーチが流れたトランペットの音が聞こえなかったせいで私は上手く歌えなかった。1−9ではなく1−10であった。試合の4番は新井選手。でも金本選手への思いはそこにあるということだろう。金本選手のヒッティングマーチは別に歌いたかった。
生え抜きの選手ではない。でも生え抜きの選手かそれ以上の思いを金本選手には持っている。それは金本選手が記録を出した試合を偶然にも何回か球場で生観戦しているからだと思う。
甲子園のライトスタンドにライナーで突き刺さった300号ホームラン。苦しんだ末にライト前に放った2000本安打。そしてこの土日で1492試合目のフルイニング出場と、その世界記録が途切れる瞬間を見た。
常々思うのは、タイガースファン(に限らずファン)を継続するということは時間を共有するということだ。勢いよく伸びる若手もいつかは下り坂になる。好調もあれば不調もある。その姿をどう見ることができるか?どう思えるか?それらはファンである私を試しているかのような痛みである。
目の前でこの場面を見た事実は、見ている私にもまた新たな試練を与えられたのだと思う。記録に関する事実を目の前にすることは喜びだけではなく、切なさを感じるときもあることを知ったのだ。
ここからの金本選手の凄さを実感したい。今までも凄いが、記録更新に一旦区切りをつけた金本選手がどのようにして帰ってくるか?その帰還までの凄味に注目したい。こちらの勝手で一方的な信頼である。金本選手の第何幕目か知らないが、ここからまた新たな幕開けの準備が始まっているのだ。それはタイガースにとっても新たな場面を迎えることになる。そこに立ち会えるファンであることで再び私もタイガースファンとして新たな場面を迎えることが出来るのではないかと思う。
とにかく今は待ちたい気持ちである。そして2010年のシーズン中の金本選手に注目したい。
必ず先発に帰ってきてほしい。約束された先発では無く、今度は先発争いをしなければならないかもしれない。若い力の台頭にもがき苦しむ姿を見ることにもなるだろう。それでもそれに打ち勝って帰ってきてほしい。
試合開始30分ほど前の選手紹介。「4番 レフト 金本」のアナウンスをあらん限りの大きな歓声で私は迎えたい。そしてその場にいることで金本選手が何度も見せてくれた、ファンであることの幸せをもう1度感じたいのだ。
伏線は前日にあった。レフト前ヒットで金本選手は返球出来なかった。無意識のうちに肩をかばっているのだろうか?握り損ねたのとは違う返球が無人のグランドに転がったのだ。
それを見ただけで何かが今までと違う雰囲気を感じたのだ。「もしかしたら・・・」というものである。
いや、実際にはその返球を見る前に、超前進守備のアニキの前に転がっただけで、横浜の3塁コーチは2塁ランナーに向かって腕をぐるぐる回している。もはや金本選手の肩はそれほどまでに相手に思われているのだ。
これでも出るのだろうか?これでも出すのだろうか?17日の試合のようにビハインドの場面ではなくて、もしもそれが決勝点となってしまう場面だったらどうするんだろう?そんなことを思いながら球場から宿泊先への帰り道を歩いた。
日曜日の試合前、金本選手の姿はグランドになかった。レフトの位置では葛城選手と浅井選手が練習していた。これにしたって金本選手は肩の様子を見て試合前練習は回避しているんだと思い、違和感は特に感じなかった。
スタメン発表が始まった。1番マートン選手、2番平野選手、3番鳥谷選手と紹介が進む。
そして4番・・・・・呼ばれたのは新井選手だった。そして選手紹介は進んで行く。
隣で見ていた妻は4番が金本選手じゃない時点で記録が途絶えることを感じ取ったということだが、私は最後の発表までそうは思えなかった。満身創痍でここまでやってきた選手である。打順が何番であろうと全力で戦ってくれるはず。そう思っていた。
8番レフト・・・・・一瞬の静寂とはこういう時間なんだろう。選手名が呼ばれるまでの時間が長く感じた。
ざわめきというかどよめきというか、そんな空気がレフトスタンドを支配した。世界記録が途絶える瞬間を見てしまったのがショックなのか、金本選手がいないスタメンを見たことがショックなのか分からないが、にわかに信じられない光景を目の当たりにした瞬間だったのだ。
負けられない。そんな気持ちになるまで時間はかからなかったが、直ぐに理解できる出来事ではなかった。頭では納得しているが、心が追い付いていないのだ。赤星選手引退の時も同じ感覚だった。
でも金本選手が引退するわけでは無い。そう思っていても何と言っていいか分からない時間だった。
この日のオーダーは始まったばかりの2010年を戦うものとなる。新井選手にはタイガースの4番として打って打って打ちまくってほしい。そう思えるのだが。。。。。
応援していても不思議な試合だった。負けられない気持ちを選手全員が出していた。ブラゼル選手の明るさ満点のアーチが場外に消え、ファンの笑顔を取り戻した。私もあんなに音程を無視して六甲おろしを歌ったことなど無い。久保田投手の投球も前日とは全然違っていた。試合をしめるのは得点差に関わりなく今日だけは球児投手しかいなかった。
金本選手は終盤に代打で出た。代打であっても偉大な選手であることに変わり無い。俺は金本選手の印象は沢山あるのだが、9回に出て来て勝負を決める強さをこの日は思い描いていた。その強さを見せる場面だってフルイニング出ているからやってくるものと思っている。
試合が終わって勝利の1−9を歌う。唐突に4番のところで金本選手のヒッティングマーチが流れたトランペットの音が聞こえなかったせいで私は上手く歌えなかった。1−9ではなく1−10であった。試合の4番は新井選手。でも金本選手への思いはそこにあるということだろう。金本選手のヒッティングマーチは別に歌いたかった。
生え抜きの選手ではない。でも生え抜きの選手かそれ以上の思いを金本選手には持っている。それは金本選手が記録を出した試合を偶然にも何回か球場で生観戦しているからだと思う。
甲子園のライトスタンドにライナーで突き刺さった300号ホームラン。苦しんだ末にライト前に放った2000本安打。そしてこの土日で1492試合目のフルイニング出場と、その世界記録が途切れる瞬間を見た。
常々思うのは、タイガースファン(に限らずファン)を継続するということは時間を共有するということだ。勢いよく伸びる若手もいつかは下り坂になる。好調もあれば不調もある。その姿をどう見ることができるか?どう思えるか?それらはファンである私を試しているかのような痛みである。
目の前でこの場面を見た事実は、見ている私にもまた新たな試練を与えられたのだと思う。記録に関する事実を目の前にすることは喜びだけではなく、切なさを感じるときもあることを知ったのだ。
ここからの金本選手の凄さを実感したい。今までも凄いが、記録更新に一旦区切りをつけた金本選手がどのようにして帰ってくるか?その帰還までの凄味に注目したい。こちらの勝手で一方的な信頼である。金本選手の第何幕目か知らないが、ここからまた新たな幕開けの準備が始まっているのだ。それはタイガースにとっても新たな場面を迎えることになる。そこに立ち会えるファンであることで再び私もタイガースファンとして新たな場面を迎えることが出来るのではないかと思う。
とにかく今は待ちたい気持ちである。そして2010年のシーズン中の金本選手に注目したい。
必ず先発に帰ってきてほしい。約束された先発では無く、今度は先発争いをしなければならないかもしれない。若い力の台頭にもがき苦しむ姿を見ることにもなるだろう。それでもそれに打ち勝って帰ってきてほしい。
試合開始30分ほど前の選手紹介。「4番 レフト 金本」のアナウンスをあらん限りの大きな歓声で私は迎えたい。そしてその場にいることで金本選手が何度も見せてくれた、ファンであることの幸せをもう1度感じたいのだ。