タテジマとファイブアローズに魅せられて

　とにかく高めに行こうと何であろうと、思い切り投げ込むボールが良かった。カーブのような感じのボール、少し落ちるフォークにそうじゃないフォーク。色々投げながら試合をギリギリのときもあったけど作っていった。

　吉村に打たれたのは早い話が失投。１試合に１回は投げてしまうであろう失投だが、打たれてしまったら仕方ないと思えるボールである。

　今後、登板したときにはリードしている場面ばかりではなく、今日のように２ラン打たれてもリードしている場面ばかりではない。ここ一番で失投しない投手が勝てる投手となっていくのである。

　そう思うと、５回表に迎えたピンチで村田を見逃し三振に取った場面は興味深かった。

　セットポジションで投球をしていたが、少しリズムを悪くしていた感じだった。

　ここでテレビが映したのはベンチだった。木戸さん、久保さんが矢野さんに向かってなにやら伝えようとしている。身振り手振りで伝えるポーズには「振りかぶれ！」という風に見えた。

　次の瞬間、石川投手は振りかぶっていた。そしてホームランキングの村田を三振に取ったのだ。

　初回からタイガースは攻めた。それは色々な気持ちで攻めたんだろう。

　連敗を脱する気持ち。ルーキーに初登板、初勝利を挙げさせたい気持ち。様々であろう。

　もしもチームのことだけ、自分のことを中心に考えたら序盤の見事な攻撃は生まれなかったかもしれない。ところが“プロ初先発のルーキーに勝ち星をあげよう！”の気持ちを１つにしたタイガースは強かった。もしかしたらこの起用はチームを１つにまとめなおすかもしれない。それほど“意思のある”起用だった。

　色々な新聞社サイトをめぐっていると、昨日の試合の記事で２０代のファンが監督のことを呼び捨てにしたうえで采配批判をしていたが、現在のタイガースの采配は完全に勝ちを狙っているものだ。この選手がここで結果を出したらチームにどんな影響が出るか？それも起用を変えながら、そして目先の勝利とこれからの今シーズンの両方を見ながら試合を戦っているのが俺には良くわかる。

　欲を言えば点数をもっとあげたかった。でも今日は連敗脱出が何よりも大事。大量得点だろうが、僅差だろうが１勝は１勝である。勝ちを重ねて行く。読売云々ではなく阪神タイガースとして勝ちを重ねて行くのだ。

　石川投手のインタビューを聞いて、彼のプロ入り時のコメントなどを不意に思い出して少し涙ぐんでしまったが、甲子園で初めてのお立ち台でこんなに落ち着いている新人は久しぶりだ。

　この１勝が残り試合の中でどこまで輝くか？そして今日の試合で改めて見せてくれたチーム一丸。他所のチームはどうか知らないが・・・・・阪神タイガースは心の野球なのだ！！だから心は折れないで残る試合を戦っていくのだ。だから俺も心を折らずに応援するのだ！！