タテジマとファイブアローズに魅せられて

　まるでなにかに吸い寄せられるかのように大竹投手の投じたボールがストライクゾーンに入ってきた。迷わず振りぬく金本選手。スイングスピードは相変わらずで安心したが、シーズン中に比べれば少し慎重な感じを受けた。

　もしも金本選手が出塁したら・・・・・それが凄く心配だった。その心配を取り除いてくれるかのような打球がレフト最前列の少し前にあるスタンド部分に飛び込んだ。これならゆっくり帰って来れる。それを作り出した直接の当事者は金本選手だが、あまりにも島野さんが作ってくれたかのような場面で、そのとおりに結果を出す金本選手を知って俺は“千両役者”とはこのことだなぁって思った。

　金本選手がホームランを打つ。次は島野さんが病床で心配していたと伝えられている今岡選手の出番だ。

　凡退していた後に、チャンスにスコアリングポジションにランナーを置いた。２００５年はこのような場面では必ずと言っていいほど打点を上げてきた。その場面だ。

　今岡選手は振りぬいた。ジャストミートであったかどうかは分からない。でもそれはこの試合の打点になった。感情、表情に出さない選手が心で島野さんに結果を捧げた。

　野口さんの打撃も良かった。２００３年の優勝時には矢野さんの２番手捕手だったが、その存在でチームを支えてくれた選手。昨年は３割５分を超える成績で存在を改めて知らしめた。これもよかった。

　ルー選手がホームランを打った。今年やってもらうために来日した選手。

　今まで島野さんと一緒に戦った選手が結果を出した。島野さんを知らない
けどこれからやってもらわなけりゃ困る選手も頑張った。過去、現在、近未来のタイガースを今日の京セラドームで島野さんに捧げる試合で見せることが出来た。

　相手チームの選手になっちゃったけど、赤松選手はヒットに盗塁、喜田剛選手も出場した。島野さんにとってはみんな教え子だ。

　天国で島野さんはタイガースをきっと見守っていてくれる。今日は島野さん追悼試合だけど、これからだって毎試合観ていてくれるはず。恥ずかしい試合なんて出来ない。俺もファンだから恥ずかしい応援なんて出来ない。そんな気持ちになった今日の試合だった。