だから言ってんだろうが!
西日が淀川の水面で反射する。思わず目を細める。
梅田から阪神電車に乗ってしばらくすると地下をでる。やがて電車は淀川を渡る。漫漫たる水量はいつ見ても同じ。でも新大阪から大阪梅田に向かう途中に渡る淀川とは同じ河川であっても随分と趣が違うものだ。
新幹線の冷房も弱めになった9月中旬、車窓に差し込む日差しは相変わらず暑く、若干の不快さを伴って肌に絡み付いた。
梅田から阪神電車に乗ってしばらくすると地下をでる。やがて電車は淀川を渡る。漫漫たる水量はいつ見ても同じ。でも新大阪から大阪梅田に向かう途中に渡る淀川とは同じ河川であっても随分と趣が違うものだ。
新幹線の冷房も弱めになった9月中旬、車窓に差し込む日差しは相変わらず暑く、若干の不快さを伴って肌に絡み付いた。
もう何度も来た場所、何度も通った道を今日も辿って来た。近くもないけど遠くもない時間をかけて新大阪に降り立つ。そこからどう動いて甲子園に行くか、それはその時次第。でも水をたたえた淀川を必ず渡ってきた。
どちらかといえば阪神電車で甲子園入りすることの少ない俺。ましてや平日の、しかも金曜日でもない日のナイトゲーム。それも日本シリーズでもなんでもない公式戦。忘れていた感覚を懐かしく思い出した。
梅田を出発した時から車内は満員。ユニフォーム、帽子、様々にタイガースを身にまとったファンがたった1箇所の場所に集まるためにあちこちから身を寄せていた。
きっと帽子を1つしか持っていないわけでもないだろう。きっとユニフォームも1着しか持っていないわけでもないだろう。ユニフォームを着る体は1つしかない。帽子を被る頭も1つしかない。分かっていても買ってしまうのがファンの性。「もう持ってるでしょ?また買ってきたの?」と言われても気がついたら増えているグッズの数々。
試合があるから、選手が戦っているからという理由でジッとしていられない連中が押し寄せる場所がある。近所のファンから遠方のファンまで、それが平日であろうと休日であろうと、4月であろうと消化試合であろうと集まってくる場所がある。
タイガースファン=タイガースに損得勘定の出来ない連中。タイガースファン=諦めの悪い連中。単純な式が出来上がる。そして誰もそれを「恥ずかしい」と思っていない。むしろ誇らしげに「それがどうした!」と居直る連中。タイガースファン=気が短く、しかしある時は恐ろしいほど優しく粘り強い連中。浪花節とはタイガースのための言葉のような気もしてくる。
甲子園は秋の気配が漂っていた。蔦の葉の紅葉はもっと先のことだが、空は徐々に秋の気配を漂わせている。風も熱風ではなく、すこし優しい風が吹く。
いつもと違う8号門から中に入る。まさかレストランがあるとは思わなかったぜ!!誠のつけ面で食事を済ませ、銀傘の下にある席に深々と腰掛ける。目の前では戦いが始まろうとしている。
負けられないというチーム事情にありながら、チームは「負ける?それ、誰のこと?」と涼しげな雰囲気さえ醸し出して勝って行く。名古屋で負け越したのが嘘のように、ライトスタンドが「絶対勝つぞ!タイガース!!」とコールするのを現実にするかのように9月のタイガースは勝ち進んでいる。
1回の応援は少し声が小さめ。やはりトランペットが少ないせいか、声のズレがあり、メガホンの音ばかりが響く。
スタンドの声が響き始めたのは金本選手の打席あたりから。「・・・・・ラーイトスタンドへ〜♪」の声が球場に響き広がる。チャンスを迎える。「ワッショイ!ワッショイ!!」が始まった。やはりチャンスには「ワッショイ!」が似合う。「行くぞチャ〜ンス〜♪」も個人的には好きだが、ワッショイの一体感には敵わない。相手チームを自然と追い込むワッショイが10人目の選手として襲い掛かる。
繰り返されるワッショイ!何回もやっているうちに徐々に乱れてくる。でもその乱れがワッショイ!の乱反射を起こし、四方八方から、上下左右からグランド中央にワッショイ!の鉄槌が振り下ろされる。
素晴らしい角度で、そして素晴らしい伸びでレフトスタンドに吸い込まれていった関本選手の打球。あぁ、選手からは自分の放った打球がこんな風に見えるんだろうなぁ。と、その気持ちよさに惚れ惚れする至高の時間。
およそ1年前にプロ入り初完封を達成し、一緒にお立ち台に上がった誕生日の今岡選手に「おめでとうございま〜す。」と真面目な顔で上目遣いに頭を下げたヒーローが、完封は逃したもののやはりプロ入り初の無四球完投勝利。打ってもタイムリー。どうも個人的にこの選手には相性が良い。
いつもライトや1アルで聞いている音とは違う銀傘の下で聞くスピーカーからの音。へぇ、こんな音を出しているんだ。そりゃそうだよなぁ、外野とか1アルは拡声器のスピーカーのデカイやつだもんなぁ。恐ろしくクリアな音と、1塁ベンチの横で一緒に応援するトラッキー。選手のいる高さよりは高いものの、選手ってこんな音を聞きながら戦っているんだなぁ・・・と思える場所。
ファンクラブ募集のキャッチコピーは「観戦ではなく参戦」だったかな?そう、タイガースファンは球場で観戦というよりは参戦している。ここには一体となれる何かがある。お気に入りのユニフォームにハッピやリストバンド、お気に入りの帽子やタオル。どれか1つでも身に付ければ参戦の準備完了。あとは戦い、そして勝つだけ。冷静に考えたら優勝するチームであったとしても1年に60くらいは負けるものだが、球場に来る連中は「今日から全勝!」をどこかで信じてしまっている連中。
試合が終わる。六甲颪が流れ、ヒッティングマーチメドレーが流れる。帰りを惜しむファンが選手へのコールを送る中、いつもより少し早めに席を立つ。左上を見れば、「おっ」サンテレビのブースに福本さんの顔が見える。
試合後に甲子園口。赤ちょうちんでビールをグイッと飲み干す。火曜日なのになぜ俺はここにいるのだろう。仕事だってやることはあるのになぜ俺はここにいるのだろう。明日の朝、一番早い新幹線で帰るのになぜ俺はここで酒を飲んでいるのだろう?そもそも俺はどこに住んでいるのだろう?様々な不思議を感じながらその場所に俺は座っていた。
結局答えは1つだけ。タイガースファンだから。阪神が好きだから。阪神甲子園球場が好きだって言ってんだろうが!!タイガースファンだっっつってんだろうが!!気の弱い、シャイな僕・・・・・。
少し酒臭い息と、少し赤くなった顔で甲子園口から電車に乗る。試合が終わって時間は経っているのに一目で観戦帰りと分かる人がホームに並んでいる。電車からは仕事帰りの人たちが降りてくる。その人たちと入れ替わるように勝利に酔いしれた人たちが乗り込んだ。
電車は線路の継ぎ目の上を走る音をさせながら走る。新大阪が近づくにつれ、少しずつ明日のことが頭に浮かんでくる。どう仕事を組み立てようか?どう進めてみようか?
Fight for tomorrow. HANSHIN Tigers, It's my Life.
やがて電車は淀川を渡る。ほんの6時間前まで西日を反射していた淀川は、今は橋の明かりをぼんやりと水面に映していた。
どちらかといえば阪神電車で甲子園入りすることの少ない俺。ましてや平日の、しかも金曜日でもない日のナイトゲーム。それも日本シリーズでもなんでもない公式戦。忘れていた感覚を懐かしく思い出した。
梅田を出発した時から車内は満員。ユニフォーム、帽子、様々にタイガースを身にまとったファンがたった1箇所の場所に集まるためにあちこちから身を寄せていた。
きっと帽子を1つしか持っていないわけでもないだろう。きっとユニフォームも1着しか持っていないわけでもないだろう。ユニフォームを着る体は1つしかない。帽子を被る頭も1つしかない。分かっていても買ってしまうのがファンの性。「もう持ってるでしょ?また買ってきたの?」と言われても気がついたら増えているグッズの数々。
試合があるから、選手が戦っているからという理由でジッとしていられない連中が押し寄せる場所がある。近所のファンから遠方のファンまで、それが平日であろうと休日であろうと、4月であろうと消化試合であろうと集まってくる場所がある。
タイガースファン=タイガースに損得勘定の出来ない連中。タイガースファン=諦めの悪い連中。単純な式が出来上がる。そして誰もそれを「恥ずかしい」と思っていない。むしろ誇らしげに「それがどうした!」と居直る連中。タイガースファン=気が短く、しかしある時は恐ろしいほど優しく粘り強い連中。浪花節とはタイガースのための言葉のような気もしてくる。
甲子園は秋の気配が漂っていた。蔦の葉の紅葉はもっと先のことだが、空は徐々に秋の気配を漂わせている。風も熱風ではなく、すこし優しい風が吹く。
いつもと違う8号門から中に入る。まさかレストランがあるとは思わなかったぜ!!誠のつけ面で食事を済ませ、銀傘の下にある席に深々と腰掛ける。目の前では戦いが始まろうとしている。
負けられないというチーム事情にありながら、チームは「負ける?それ、誰のこと?」と涼しげな雰囲気さえ醸し出して勝って行く。名古屋で負け越したのが嘘のように、ライトスタンドが「絶対勝つぞ!タイガース!!」とコールするのを現実にするかのように9月のタイガースは勝ち進んでいる。
1回の応援は少し声が小さめ。やはりトランペットが少ないせいか、声のズレがあり、メガホンの音ばかりが響く。
スタンドの声が響き始めたのは金本選手の打席あたりから。「・・・・・ラーイトスタンドへ〜♪」の声が球場に響き広がる。チャンスを迎える。「ワッショイ!ワッショイ!!」が始まった。やはりチャンスには「ワッショイ!」が似合う。「行くぞチャ〜ンス〜♪」も個人的には好きだが、ワッショイの一体感には敵わない。相手チームを自然と追い込むワッショイが10人目の選手として襲い掛かる。
繰り返されるワッショイ!何回もやっているうちに徐々に乱れてくる。でもその乱れがワッショイ!の乱反射を起こし、四方八方から、上下左右からグランド中央にワッショイ!の鉄槌が振り下ろされる。
素晴らしい角度で、そして素晴らしい伸びでレフトスタンドに吸い込まれていった関本選手の打球。あぁ、選手からは自分の放った打球がこんな風に見えるんだろうなぁ。と、その気持ちよさに惚れ惚れする至高の時間。
およそ1年前にプロ入り初完封を達成し、一緒にお立ち台に上がった誕生日の今岡選手に「おめでとうございま〜す。」と真面目な顔で上目遣いに頭を下げたヒーローが、完封は逃したもののやはりプロ入り初の無四球完投勝利。打ってもタイムリー。どうも個人的にこの選手には相性が良い。
いつもライトや1アルで聞いている音とは違う銀傘の下で聞くスピーカーからの音。へぇ、こんな音を出しているんだ。そりゃそうだよなぁ、外野とか1アルは拡声器のスピーカーのデカイやつだもんなぁ。恐ろしくクリアな音と、1塁ベンチの横で一緒に応援するトラッキー。選手のいる高さよりは高いものの、選手ってこんな音を聞きながら戦っているんだなぁ・・・と思える場所。
ファンクラブ募集のキャッチコピーは「観戦ではなく参戦」だったかな?そう、タイガースファンは球場で観戦というよりは参戦している。ここには一体となれる何かがある。お気に入りのユニフォームにハッピやリストバンド、お気に入りの帽子やタオル。どれか1つでも身に付ければ参戦の準備完了。あとは戦い、そして勝つだけ。冷静に考えたら優勝するチームであったとしても1年に60くらいは負けるものだが、球場に来る連中は「今日から全勝!」をどこかで信じてしまっている連中。
試合が終わる。六甲颪が流れ、ヒッティングマーチメドレーが流れる。帰りを惜しむファンが選手へのコールを送る中、いつもより少し早めに席を立つ。左上を見れば、「おっ」サンテレビのブースに福本さんの顔が見える。
試合後に甲子園口。赤ちょうちんでビールをグイッと飲み干す。火曜日なのになぜ俺はここにいるのだろう。仕事だってやることはあるのになぜ俺はここにいるのだろう。明日の朝、一番早い新幹線で帰るのになぜ俺はここで酒を飲んでいるのだろう?そもそも俺はどこに住んでいるのだろう?様々な不思議を感じながらその場所に俺は座っていた。
結局答えは1つだけ。タイガースファンだから。阪神が好きだから。阪神甲子園球場が好きだって言ってんだろうが!!タイガースファンだっっつってんだろうが!!気の弱い、シャイな僕・・・・・。
少し酒臭い息と、少し赤くなった顔で甲子園口から電車に乗る。試合が終わって時間は経っているのに一目で観戦帰りと分かる人がホームに並んでいる。電車からは仕事帰りの人たちが降りてくる。その人たちと入れ替わるように勝利に酔いしれた人たちが乗り込んだ。
電車は線路の継ぎ目の上を走る音をさせながら走る。新大阪が近づくにつれ、少しずつ明日のことが頭に浮かんでくる。どう仕事を組み立てようか?どう進めてみようか?
Fight for tomorrow. HANSHIN Tigers, It's my Life.
やがて電車は淀川を渡る。ほんの6時間前まで西日を反射していた淀川は、今は橋の明かりをぼんやりと水面に映していた。