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タテジマとファイブアローズに魅せられて

阪神タイガースはもちろん、Bリーグの香川ファイブアローズも応援中。
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箱の中の希望
 今回は文章の性質上、選手の名前に「さん」や「選手」を付けないことをあらかじめお許し下さい。

 

ギリシャ神話のパンドラの箱の話を知っている人は大勢いると思う。

 世界で最初の女性であるパンドラは、神から1つの箱と好奇心を渡される。しかしその箱は絶対に開けてはいけないものと言われていたのだ。

 しかし、好奇心を受け取ってしまっていたパンドラはついにその箱を開けてしまう。すると箱の中に入っていたありとあらゆる災禍が飛び出してしまった。というお話である。

 タイガースにもこのパンドラの箱のようなものを持たされてしまった選手がいる。

 1人目はタイガース待望の速球派といわれた選手だ。ルーキーイヤーから2ケタ勝利を挙げ、まるで自らのスピードに取り付かれたかのように投げる球の急速は上がっていった。そう、それは箱の中から1つずつ何かが飛び出して行くかのように。

 そしてそれが出てしまったとき、彼の肩が悲鳴をあげた。投げることさえ、ボールを手にすることさえできない苦痛の日々の始まりだった。

 もう1人、箱を受け取ってしまった選手がいた。僕と同郷の選手だ。静岡県内でも有数の強豪高かつ進学校でエースを努めた彼はタイガースにドラフトで指名され、一時はローテーションピッチャーでもあった。

しかし彼がいた頃のタイガースは球団自体がパンドラの箱を開けてしまったかのような低迷期をたどっていた。その中でもあふれる汗をぬぐおうともせずに必死に投げる彼の姿がテレビ画面に映ったことは忘れていない。

彼はやがてタイガースからパ・リーグのチームに移籍、そして引退してゆく。僕より2歳も若い、引退したときは30歳という若さで。


でも、ちょっと待ってほしい。パンドラの箱には最後に残されたものがある。これについては色々な解釈があって、どれが正しいかという経緯は分かれるが結論は同じなので書かせていただくが、パンドラが飛び出した災禍に恐ろしくなって閉めてしまった箱の底にはたった1つ残されているものがあった。

その名は『希望』(注1)。そう、箱には希望も入っていたのである。

その希望を手にした選手。前述した2人のうち、後者の名前は山崎一玄。背番号107番の打撃投手である。

一旦はタイガースから出て行くことになったが、甲子園の神様に好かれていたのだろう、孤立無援の中、懸命に投げていた姿を甲子園の神が味方したのか彼は帰ってきた。そしてその年に彼が現役では経験できなかった優勝を裏方さんとして経験する。

投手というのは打たれないようにするのが仕事のはずである。それが打たれることを仕事にする打撃投手。練習のある日、休日でも選手が練習するとなれば出てくることもあるだろう裏方さん。試合前の練習で、以前は自分が立っていた甲子園のマウンドで、打たれないように投げていたマウンドで、今度は気持ちよく打ってもらうために投げる投手。この1球が今日のヒットにつながりますように。と願いながらのマウンドだろう。そんな彼が希望を託すのは打撃陣の1本のホームラン、1本のヒットだろうか。

もう1人は福原忍。パンドラの箱から出てきた中で、一番辛かったのはあれほど夢中になっているように見えたスピードを一時諦めることだったろう。

しかし彼は箱の中の希望を見事に手に入れた。それから彼の復活への日々が始まった。キャッチボールの距離が30mに達したことが新聞に載る日もあった。投げるときに必死に歯を食いしばっている表情の奥には様々な感情が隠されているに違いない。彼の手にした希望。それは彼の投球でチームが勝つこと。彼が勝利投手になるということは、それはチームが勝つことを意味する。

確かにスピードは以前ほどは出ないだろう(それでも時々150kmを超えるが)。そのかわり渇望していた、彼の投球による勝利を得ることができ、自然とエースの称号を手に入れることが現実味を帯びてきた。何といっても今日現在(平成16年4月29日)無傷の連勝中である。

箱の中の災禍はもう出尽くした。残るは希望だけ。タイガースのパンドラの箱の中の希望を手にした男たち。山崎のピッチングはチームの打撃陣への希望(打撃陣による勝利)のために。福原のピッチングはタイガースの投手陣による希望(勝利)のために。そして僕たちタイガースファンの希望のために。甲子園の神様がくれたパンドラの箱に残った希望はまだまだこれからもタイガースの、そして甲子園を愛する人たちの頭上にあふれ続ける。



注1:一説には「前兆」。これを箱から地上に出すと、これから起こる事を予測できるようになってしまうため、人間は希望を失ってしまうとされている。いずれにしても「希望」は守られたという解釈のため、今回は広く解釈されている表現を使用しました。
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| T−コラム | 20:01 | comments(0) | trackbacks(0) |









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