タテジマとファイブアローズに魅せられて

　上っ面の言葉ではなく、条件付でもなく、とにかく自分はここで！という潔さが実に良かった。契約条件でゴネる姿や言い訳を重ねる姿は沢山見たけど、今岡選手のように「悪い時は悪い」と言い切れる姿が素晴らしい。

「逆指名という形で入団させてもらった。」、「自分で決めて入った。」、「相思相愛」、「１０年前の気持ちは今も持ち続けている。」、「こういう考えは変わらない。」、「阪神ファンの人に、僕はこういう気持ちだということを伝えてもらいたい。」

　全てがこれ以上無いくらいの言葉で伝えられている。なのに「来季はＦＡ？」なんて書いている報道には胸くそが悪くなる。こういう報道で今岡選手は胸を痛めているのに。

　話を戻すが、「こんなはずじゃなかった。」という考えは誰でも抱く。好きだったものが大嫌いになることもある。最近のファンでなければ、今岡選手がタイガースでどれだけ不遇な思いをし、苦労してきたかを知っている。

　そういう時期を経ても「１０年前の気持ちが変わらない。」と言えることは本当に凄い。一途といえばこれほど一途な気持ちも珍しい。そして美しい。

　ＦＡ取得ということは、宣言残留による再契約金などを考えれば減俸を防ぐ手段はいくらでもあった。でもそれを良しとせず、全てを受け入れる度量がこの人にあったということに驚いたし、感動している。

　今岡選手ほどの選手になれば、生涯タイガースでいれば引退後も解説やゲストの仕事で困ることも無いだろう。でもそういった打算的なことを抜きにしても黙って契約書にハンコを押せることが凄い。

　おっとりした表情からは想像できない負けず嫌いさは、プレーを見ていると少しだけ伺うことができる。それが爆発するのがお立ち台であり、本当に嬉しそうに、笑いをこらえきれずファンにメッセージを発する姿はこちらまで嬉しくなる。

　俺は今岡選手の大ファンだ。えこ贔屓とか感情的といわれようとも大ファンだ。だから今岡選手がこういう気持ちでファンに向けて言葉を出してくれたことが本当に嬉しい。信じてきた選手が俺みたいなファンと同じ気持ちでタイガースを好きでいてくれたなんて思えることが本当に嬉しい。

　以前も書いたことだけど、タイガースの王様は今岡選手だ。今岡選手がいるから打線も怖かった。今岡選手が後ろにいるから相手もアニキと勝負した。王様がいなけりゃ治まるものも治まらない。王様がドシッと不動に構えているから他の選手も安心できる。だから今岡選手がタイガースには必要。

　決して饒舌ではない男が発した心の言葉。言葉にせずともその熱く燃える気持は隠しきれない。本当に久々に心に響く出来事。そんな今岡選手を応援する不朽の名曲の出だしは“燃える闘魂”である。